過労死訴訟:自衛官妻が逆転勝訴 国に補償命令 仙台高裁・控訴審判決
2010/11/05
「勤務中死亡は公務災害」
陸上自衛隊反町分屯地(宮城県松島町)の自衛官が勤務中に死亡したのは過労が原因として、遺族が国に遺族補償年金などを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は28日、請求を棄却した一審判決を取り消し、請求通り約2935万円の支払いを国に命じた。小磯武男裁判長は「国の公務災害の認定基準を超える超過勤務時間が認められる」として、公務上災害と認定した。
訴えていたのは一等陸曹、清野俊明さん(当時51歳)の妻晴美さん(58)=仙台市。
判決によると、清野さんは夜勤で通信業務などを担当。死亡前の1カ月間の超過勤務時間は123・5時間で、死亡10日前に米同時多発テロが起きてからは休日がなく、01年9月21日の夜勤中、脳内出血またはくも膜下出血で死亡した。小磯裁判長は判決でテロ後の勤務について、「心理的な動揺や精神的緊張を強いられたことが推認できる。公務の過重性を十分に補強する事情」と判断した。
一審仙台地裁判決(09年10月)は「高血圧、肥満、年齢などの危険因子によって引き起こされた可能性も否定できない」として、公務との因果関係を否定していた。晴美さんは判決後、「この日を待っていた」と話した。防衛省は「主張が裁判所の理解を得られなかった。関係機関と調整の上、適切に対処する」とのコメントを発表した。【須藤唯哉】
弁護士のコメント
仙台の土井浩之弁護士(一審からは土井弁護士のみ)を筆頭に仙台弁護団と波多野進(控訴審から)が担当しました。10年近く前の自衛官の過労死事件で、ご遺族は苦しく長い戦いを余儀なくされ、ひどい一審判決後は頑張ってこられたご遺族も一旦は諦めかけられましたが、土井弁護士の献身的ながんばりと不当な敗訴でもめげない励ましもありご遺族は戦い抜ぬかれました。控訴審から担当し、年末年始に段ボール一箱分の記録と一審判決を読み込み、準備書面を一気に書きましたが、書いている最中で勝たないとおかしいと確信しました。この件では労働科学の専門家の助力と脳神経の医師の助けも得られ、控訴審は被控訴人の国に対しても、あらゆる面で圧倒していたと思います。仙台高裁の判決は事実認定の面でも理論的な面でもすばらしい判決と評価できます。詳細は後日述べたいと思います。自衛官の過労死の事件で裁判で認められたのは私が知る限り初めてではないかと思います。